フィラリアの予防薬は幼虫を除去しますが、成虫に対しては全く効果がありません。 

ですから既に成虫が体内に巣くっているときには、場合によっては成虫を駆除する必要のあるときがあります。

成虫がいるからといって駆除しなければならないとは限りません。 予防薬を与えていれば新しい成虫が増えることは防げます。
フィラリアの成虫の寿命は4-5年とされていますから、その間何もなければフィラリアはいなくなります。

成虫の駆除は犬の体に大きな負担を掛け危険を伴なうことを認識する必要がありますが、 それを意識して手当が遅れると取り返しのつかないことにもなりかねない、という難しい問題があります。

また成虫の駆除と幼虫の駆除は同時に出来ませんのでどちらを優先するか、という 問題もあり得ます。
いずれにせよ、成虫駆除の是非にあたっては専門の獣医さんとご相談されることを強く お奨めします。

成虫駆除の治療に当たって最初に必要なのが患犬の状態の診断です。



低リスク患犬
若くて健康な犬だが、検査で成虫の存在が確認できるもの。病状が表れていないもの。

軽感染患犬
咳をしたり、軽度の肺動脈異常がX線検査で確認できる。しかし、血流の閉塞は 見られない。

重感染患犬
体重の減少、咳、呼吸困難などのいずれかが見られる。 血管に甚だしい損傷のあることがX線検査で明らかに見られ、血流障害により肝臓か 腎臓機能に影響が見られる。

ケイバル症候群患犬(後大静脈栓塞症)
患犬は虚脱症状を示し、尿が茶褐色を呈する。エコー検査で右心室の弁(AV VALVE)に 成虫のいるのが映る。血流の極端な異常。 他のページ(フィラリアの治療)にあるようにこの状態に立ち至った犬には頸静脈切開をして成虫を摘み出す方法しかありません。


成虫に対する薬物治療


*シアセタルサミドTHIACETARSAMIDE
 (商品名キャパルソレイトCAPARSOLATE )

シアセタルサミドは半世紀以上に渉って成虫駆除の定番医薬品でしたが、非常に危険な 副作用が伴うために、現在は次にあるメラソミンを使うことが一般的なようです。
<訳注>
この医薬品の原型はフィラリアで死ぬ犬を助けるために愛犬家であり、犬の研究家としても知られる故平岩米吉氏が島根大学と共同して私費で開発した、世界最初のフィラリア駆除薬だと思われます。 当時は幼虫を殺す予防薬がなかったため、フィラリアに罹った犬は成虫を駆除せざるを得ませんでした。

この薬は劇薬(砒素化合物)であり、致命的な肝臓障害を引き起こす可能性があります。 静脈注射により投与されますが、もし血管から外に漏れてしまうと細胞組織を浸食し腐食してしまいます。
この薬は二日連続で二回づつ投与されるのが普通です。 若い成虫と雌の成虫はこの薬に対していくらか抵抗力のある傾向があり、それが成虫を全滅させるために2回の投与をする理由です。

また、成虫を同時に多数殺すことにより、その死骸が血栓の原因になったり炎症反応を起こす危険についても留意する必要があります。これらの反応は治療後一ヶ月以内に起こることが多いので、その間の患犬の運動量 を制限することによりリスクを軽減させます。

*メラソミン (MELARSOMINE DIHYDROCHLORIDE) 
 商品名 イミトサイド

シアセタルサミド の毒性を軽減させた、フィラリア成虫駆除薬として出現しました。 メラソミンも同様に砒素化合物ですが、静脈注射ではなく筋肉注射で投与されます。
体内に多数のフィラリア成虫がいる場合には、成虫の数を減らすための投与が先ず行われ 数ヶ月後に2回目の治療を行います。
治療後に筋肉痛と炎症の発生が普通に見られます。
メラソミンは基本的にシアセタルサミドより成虫を殺すことに効果的であるとされますが 若い成虫への効果の減少は同じです。
シアセタルサミドとの基本的な違いとして肝臓への副作用はありません。 しかし、成虫の死亡により起こる血栓の発生や炎症には注意する必要があります。
治療後の運動の制限が推奨されています。


並行治療

成虫の死亡によって起きる炎症障害を緩和するために他の治療が並行して必要とされることがあります。
効果的な投薬はプレドニゾンか同様のステロイド薬品ですが、皮肉なことにこの薬は 殺そうとしているフィラリア成虫を守る働きがあるように見えることです。
割に合わない話ですが場合によっては必要になります。
多くの専門家が成虫の同時死亡時期の炎症による肉体的負担を軽減する一助としてアスピリンを代わりに使っています。
しかし、アスピリンの投与の重要性については専門家の間でも意見が分かれています。


その他

文中にあるように若い成虫は薬に対する抵抗力が強い傾向があるため、成虫が成長してから薬を投与するために治療のタイミングを待つことがあります。