フィラリアに罹った犬の症状についてお話しする前に、フィラリアが寄生しているだけの
犬と症状が現れている犬の違いについてはっきりさせておく必要があります。
定義として「フィラリア感染」とはフィラリアの生活環()のいずれかの段階が犬の体内に
いることを示します。つまり、フィラリアに感染しているといっても、必ずしも成虫が心臓や肺動脈にいるということではありません。
幼虫が皮膚内にいるだけかもしれないのです。 |

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ですから、フィラリア感染がそのまま、宿主である犬が病気であるということでもないのです。幼虫が寄生している段階での犬はもちろん病状がありませんし、成虫が1,2匹いるだけでどの位
危険なのかは論議を呼ぶところです。
一方、フィラリア寄生による症状(下記に説明があります)が出ている場合、これは病気とみなさなければなりません。しかし、幸いなことにフィラリアの寄生に対しては治療も予防も可能です。
ここではフィラリアの寄生が犬に対してどのような害をなすのかをご説明します。
肺動脈の損傷とその影響
肺動脈は成虫が中にいるとその機能が低下します。肺動脈の壁面は成虫が棲むようになると数日以内に損傷を受けるからです。
フィラリアという体内の異物を排除するために免疫細胞が招集されますが、成虫は免疫細胞が破壊するにはあまりに大きすぎます。免疫細胞の抵抗は炎症を招き、炎症は更に壁面を傷めてしまいます。
肺動脈は拡大し曲がりくねるようになります。(この状態はX線写真で見ると分かります。)
肺動脈の損傷は動脈瘤と血液の凝固(塞栓)を引き起こすことになります。
他の健康な動脈へ送られるべき血流は阻害され、リンパ液などの液体がフィラリアのいる動脈の付近の肺に溜まってしまいます。
肺に送られた血液は酸素交換が不充分になり、また肺の毛細血管壁面が固く脆くなってその部分が酸素交換に参加できなくなってしまいます。
*このような状態になると、空咳と運動が出来なくなってしまう症状が表れます
*肺動脈の血栓の結果として、それが鼻血になって表れることがあります
*寄生の結果引き起こされた肺動脈の炎症が肺に侵入して非感染性の肺炎を引き起こすことがあります
心臓麻痺
成虫の存在により肺動脈の血流が阻害されると、心臓はより強い力(高血圧)で血液を送らなければならなくなります。
この状態は肺高血圧症(PULMONARY HYPERTENSION)と呼ばれます。
負担のかかる右心室は急速に血液を送り出すためのポンプ能力を拡大しなければなりません。負担に耐えられるだけの心臓能力を獲得できるかどうかは個々の犬の体力によります。
成虫の数が増え肺動脈だけでなく、血液を送り出すためのポンプ室にあたる心室にまで虫が棲むようになると、送り出す血液のためのスペースが狭くなってしまいます。
そのため、体の酸素の必要に応えるために心臓は更に高血圧を必要とします。そして、この過度な負担はいつか心臓がそれに耐えられなくなる時点を招くのです。
すべての筋肉がそうであるように、心臓の筋肉も肥大すると筋肉の収縮と弛緩を司る電気信号が正常に作動しなくなります。
このことは心臓への血液の流入と送り出しのリズムが乱れることを意味し、不整脈が起こり得ます。
どのような心臓疾患においても、不整脈がみられる可能性があります。そして不整脈があれば突然死も起こる可能性があります。
*右心室と右心房が血流を正常に送り出すことが充分に出来なくなると、リンパ液などの液体が胸か腹部の隙間に溜まってしまい、ひっきりなしの空咳や腹水(に よるお腹が膨れた外見)を引き起こします。
慢性免疫亢進
フィラリアが体内にいるのに治療がなされない場合、犬の免疫系は慢性的に刺激を受け 続けることになります。 抗体は免疫系上重要な武器ですが同時に炎症を起こさせるタンパク質でもあります。
この抗体がフィラリアという異物を排除しようと常時大量に生産されます。
* 過剰になった抗体は眼や腎臓、血管や関節といったデリケートな器官に溢れだ
し、その部分に定着して炎症を起こし深刻な細胞破壊と痛みをもたらします。
ケイバル症候群
ケイバル症候群は、フィラリアにより引き起こされる病状でとりわけ悲惨なものです。
成虫の数が非常に多く(100匹ほど)存在する場合、成虫は肺動脈、右心室だけでは 入りきれずに、心室に必要な血液を送り込むための動脈、冠状動脈にまで押し出されます。
*(そこまで事態の悪化に耐えられる犬は心臓が強いため)突然の虚脱、ショック 赤血球の破壊が起きるまで前駆症状の見られないのが普通
です。
発病すると1~2日で死亡しますが、こうなったときの唯一の効果的な治療法は頸静脈を切開し、特殊なピンセットで 物理的に成虫を除去するという過激な手術です。
この方法により、成虫を除去して血流を回復させることが出来れば犬を生き延びさせることが可能です。
以上に見られるように、フィラリアによって引き起こされる病気は犬にとって非常に深刻な問題であり、寄生しているフィラリアそのものとフィラリア成虫により引き起こされる
病状との両面で適切な対処が望まれます。
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